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企業の知的財産保護に役立つ、stiiタイムスタンプ知的財産マネージャーの活用方法について

目次
3 stii タイムスタンプサービス

弁護士 松下大輝(執筆)

東京スタートアップ法律事務所 弁護士

・広島大学法学部 卒業
・神戸大学法科大学院 修了
・弁護士登録
・東京スタートアップ法律事務所入所

1. はじめに

企業の知的財産(IP)の保護は、競争優位性を維持するために欠かせない要素です。近年、デジタル化の進展により、IPを適切に管理し、証拠を保全するためのツールがますます重要になっています。その中でも、stiiタイムスタンプ知的財産マネージャーは、企業が自社の知的財産を守るために強力な武器となり得ます。このツールは、アイデアや発明、デザイン、著作物など、企業の貴重な資産の権利を証明し、不正使用から保護するために、正確なタイムスタンプを提供します。この記事では、stiiタイムスタンプ知的財産マネージャーの活用方法を紹介し、その利点と企業への実際的な影響についてご説明します。

2. 電子データの証拠力とは?

(1) 証拠力の基本概念
法律において証拠とは、事実の存否を立証するための資料を指します。裁判において、原告または被告は自身の主張を裏付けるために様々な証拠を提出する必要があります。従来、契約書や領収書などの文書は、紙媒体に押印や署名がなされることで証拠としての信用性が担保されていました。
しかし、デジタル社会の到来により、多くの契約書や取引記録が電子データとして保存されるようになり、それに伴う法的課題が発生しています。

(2) 電子データの特徴と証拠力の問題
電子データは以下の特徴を持ちます。

  1. 改ざんが容易:電子データは物理的な書類と異なり、痕跡を残さずに変更や削除が可能です。
  2. 作成者の特定が困難:電子データは手書きの署名や印鑑のような物理的な証拠がなく、誰が作成したかの証明が難しいです。
  3. 消失のリスク:データの紛失や、ハードディスクの故障による消失リスクがあります。
    これらの課題を解決するために、電子データの証拠力を補強する技術が必要となります。その代表例が「タイムスタンプ」です。

3. タイムスタンプとは?

(1) タイムスタンプの基本原理
タイムスタンプとは、電子データが特定の時刻に存在し、それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。これにより、電子データが作成時点で存在し、その後変更がないことを証明し、証拠力を高めます。
その仕組みは以下のようになっています:

①ハッシュ値の生成:電子データを一意のハッシュ値に変換します。

②時刻認証機関(TSA)による証明書発行:認定された第三者機関が、タイムスタンプ証明書を発行し、その時点でデータが存在したことを証明します。

➂検証機能:後日、付与されたタイムスタンプを検証することで、データの改ざんがないか確認できます。

(2) 日本における法的効力
日本の電子帳簿保存法では、電子データの保存要件として「タイムスタンプの付与」を認めています。
• 総務大臣認定の「時刻認証業務認定事業者(TSA)」が発行するタイムスタンプが証拠力を持ちます。
• 改ざん検知機能の証明がある場合、税務調査などで書類の真正性が認められやすくなります。

(3) 裁判における証拠能力
民事訴訟において、電子データの証拠能力は以下の要素で判断されます:

  1. 真正性:改ざんされていないことが証明できるか。
  2. 作成者の特定が可能か。
  3. データの保存期間が法的要件を満たしているか。
    タイムスタンプを利用することで、データの真正性や作成日時の証明が可能となり、証拠力の高いデータ管理が実現できます。

4. 知的財産保護でタイムスタンプが活用できる場面(先使用権立証)

知的財産保護としてタイムスタンプの活用できる場面としては、職務発明の特許登録における先使用権の主張立証が挙げられます。

先使用権とは、特許法第79条に基づき、他者が特許を取得した発明と同一の発明を、特許出願前から日本国内で事業として実施、またはその準備をしていた者が、その発明を継続して実施する権利を指します。

特許法第39条に基づき、誰に特許登録を認めるかという判断は出願日を基準として決定されます(先願主義)。この先願主義の考え方を徹底すると、他人の特許出願の際にすでに実施やその準備をしていた者も、他の者により特許を取得されてしまうと、それ以後の実施はできないことになってしまいます。

出願により発明の公開をした特許権者を厚く保護すべきという考え方もありますが、現在の産業界では、どの技術を特許出願し、どの技術をノウハウとして企業内で秘匿するか、という点は重要な企業戦略となっていますので、発明をなした者にすべからく出願を強制する結果も好ましくありません。

このような価値判断の調整として、特許法は、他人の出願の際に現に実施あるいはその準備をしている者に、通常実施権を認めています。

このような制度設計は、特許制度の下での先願主義においても、先に事業化のための投資を行っていた者を保護するための制度ともいえます。

 

この先使用権を主張するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 独自の発明:特許出願にかかる発明の内容を知らないでなされたこと
  2. 日本国内での実施または準備: 特許出願前に、日本国内でその発明を実施しているか、または実施のための準備を行っていること。
  3. 継続的な実施: 特許出願後も、引き続きその発明を実施していること。
    これらの要件を満たすことを立証するためには、発明の完成時期や事業の準備状況を示す客観的な証拠が必要となります。

具体的には、
• 発明研究の経緯
• 発明完成時の技術資料や社内の職務発明の届出
• 実施品となる製品等の開発の経緯
• 事業化に至るまでの社内資料、事業計画資料
• 各種関連取引に関する稟議、契約書
• 発明した製品の受注、生産、販売の状況
• 広告宣伝活動の実績
等を証明していくことになります。

5. タイムスタンプの有効性

先使用権の立証においては、発明の完成時期や事業準備の開始時期を正確に証明することが重要です。この際、電子データに対するタイムスタンプの活用が有効な手段となります。
タイムスタンプの活用により、以下の点で先使用権の立証が強化されます。

• 日時証明: 電子データが特定の時刻に存在していたことを証明できるため、発明の完成時期や事業準備の開始時期を客観的に示すことが可能です。
• 非改ざん証明: タイムスタンプが付与された後の電子データの改ざんが検出可能であり、証拠の信頼性を高めます。
ただし、タイムスタンプの有効性を維持するためには、以下の点に留意する必要があります。
• タイムスタンプの有効期間: TSA証明書には有効期間が設定されており、その期間が経過するとタイムスタンプの証明力が失われる可能性があります。したがって、有効期間が経過する前に再度タイムスタンプを付与するなどの対応が必要です。

6. 「stii タイムスタンプ知的財産マネージャー」の活用

「stii タイムスタンプ知的財産マネージャー」には、以下の機能があります。

• タイムスタンプ付与機能:データの存在時点と改ざん防止を証明します。
• 検証機能:改ざんされていないかを一括で確認可能です。
• 延長機能:長期保存に適したタイムスタンプの更新が可能です。
特に「知的財産権の保護」と「先使用権立証」においては、技術文書の真正性を担保し、研究開発の証拠保全をサポートすること、裁判・訴訟リスクを軽減し、企業の知財戦略を強化することの効果が見込まれます。
本製品を活用することで、企業は法的リスクを最小化しながら、効率的な知的財産管理が可能になります。

7. stii タイムスタンプ知的財産マネージャーの特長

stii タイムスタンプ知的財産マネージャーは、**「総務大臣認定タイムスタンプ」**を利用し、知的財産の保護と管理を容易にするツールです。
特に以下の機能が先使用権の立証において有効です。
• タイムスタンプ付与機能

  • ワンクリックで複数ファイルにタイムスタンプを一括付与
  • 各種電子データ(研究ノート、設計図、技術文書など)に対応
  • 電子帳簿保存法に対応(2024年1月から完全義務化)
  • タイムスタンプ検証機能
  • 過去に付与したタイムスタンプの有効性を確認
  • データの改ざんが行われていないかを一括で検証し、先使用権立証時の証拠の信頼性を確保
  • タイムスタンプ延長機能
  • 10年を超えて保存が求められる文書にも対応
  • 先使用権は特許の出願日よりも前に発明を実施していたことを証明する必要があるため、10年以上のデータ保管を保証する機能が非常に有用です。

8. stiiタイムスタンプ知的財産マネージャー活用の具体的な流れ

stii タイムスタンプ知的財産マネージャーは、**「総務大臣認定タイムスタンプ」**を利用し、知的財産の保護と管理を容易にするツールです。
特に以下の機能が先使用権の立証において有効です。
• タイムスタンプ付与機能

  • ワンクリックで複数ファイルにタイムスタンプを一括付与
  • 各種電子データ(研究ノート、設計図、技術文書など)に対応
  • 電子帳簿保存法に対応(2024年1月から完全義務化)
  • タイムスタンプ検証機能
  • 過去に付与したタイムスタンプの有効性を確認
  • データの改ざんが行われていないかを一括で検証し、先使用権立証時の証拠の信頼性を確保
  • タイムスタンプ延長機能
  • 10年を超えて保存が求められる文書にも対応
  • 先使用権は特許の出願日よりも前に発明を実施していたことを証明する必要があるため、10年以上のデータ保管を保証する機能が非常に有用です。

9. まとめ

stii タイムスタンプ知的財産マネージャーは、発明の完成時期を証明し、長期にわたる知的財産の保護と管理を可能にするツールです。先使用権の立証には、技術文書が出願前に存在し、改ざんされていないことを証明する必要があり、stii タイムスタンプの付与・検証・延長機能が有効です。

企業がこのツールを導入し活用することで、知的財産の管理と保護を一層強化し、競争力を高めることができると言えるでしょう。

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「いつ作ったのか」「誰が作成したのか」を客観的に証明できなければ、
法的に“後発扱い”され、先使用権の主張すら退けられる可能性があります。
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