企業が独自の技術やアイデアを保護する方法として、「特許出願」と「タイムスタンプ」の2つの異なる手段があります。
特許は発明を独占的に使用する権利を与える制度ですが、取得までに多くの時間と費用がかかります。一方、タイムスタンプはデータの存在証明を行う手段であり、コストが低く迅速に導入できるため、特に中小企業やスタートアップにとって有力な選択肢となります。本記事では、特許とタイムスタンプの違いを比較しながら、自社技術を守るためにタイムスタンプの方が有利な理由を解説します。
特許出願の課題
特許を取得することで、一定期間その技術を独占的に使用できますが、いくつかの課題があります。
取得コストが高い:特許の出願には、弁理士費用や特許庁の審査料など、多額の費用が発生します。維持費もかかるため、長期的に見ると負担が大きくなります。
審査に時間がかかる:特許庁の審査には通常1年以上かかり、その間に競合他社に先を越されるリスクがあります。
技術が公開される:特許を出願すると、一定期間後に技術内容が公開されます。これにより、競合他社が類似技術を開発する可能性があり、必ずしも技術的優位性を保てるわけではありません。
タイムスタンプのメリット
タイムスタンプは、デジタルデータの作成日時を証明する技術であり、特許よりも迅速かつ低コストで導入できます。主なメリットは以下の通りです。
低コストで利用可能:タイムスタンプサービスは、低コストで利用できるものも多く、企業の負担が軽減されます。
即時に証明できる:特許のように審査を待つ必要がなく、技術の存在をリアルタイムで証明できます。
機密性を維持できる:特許のように技術内容を公開する必要がなく、第三者に知られずに証拠を確保できます。
訴訟時の証拠として有効:タイムスタンプによって技術の存在を証明できるため、万が一知的財産権を侵害された場合に、法的な証拠として活用できます。
どちらを選ぶべきか?
もちろん、特許が有効な場面もあります。特許は独占権を確保できるため、技術のコアとなる部分で他社の参入を防ぎたい場合には有用です。しかし、特許の取得が難しい技術や、迅速な証明が求められるケースでは、タイムスタンプを活用する方が合理的です。
特に、中小企業やスタートアップは、開発スピードを重視しつつ知的財産を守る必要があります。その点で、タイムスタンプは迅速かつコスト効率の良い手段として、特許に代わる有力な選択肢となるでしょう。さらに、タイムスタンプは通常約10年の有効期間を持つため、10年以上の長期にわたる文書や知的財産の保存が必要な場合、「タイムスタンプの延長機能」が不可欠です。延長タイムスタンプを使用することで、電子文書の真正性をさらに10年単位で延長し、長期間にわたって改ざんされていないことを証明できます。
そもそもタイムスタンプとは
タイムスタンプとは、特定のデータがある時点で存在していたことを証明する電子的な証明手段のことを指します。電子データに対して、第三者機関が発行する時刻証明を付与することで、そのデータが改ざんされていないことを保証し、技術の開発時点や所有権を証明できます。
タイムスタンプ発行までの基本的な流れ
タイムスタンプは主に以下の3つのステップで構成されています。
Stii では総務大臣認定タイムスタンプであるアマノ社のタイムスタンプを使用しています。
要求
電子文書から「ハッシュ値」と呼ばれる固定長の文字列を生成します。このハッシュ値は、元の文書が同じなら必ず同じ値になりますが、1文字でも変更があれば全く異なる値になるという性質があります。このハッシュ値を時刻認証局(TSA: Time Stamping Authority)に送付し、タイムスタンプの発行を依頼します。発行
時刻認証局は受け取ったハッシュ値に「正確な時刻情報」を結合し、タイムスタンプを生成します。この時刻情報は改ざんが不可能な形で付与されます。生成されたタイムスタンプは利用者に返送されます。検証
タイムスタンプが付与された電子文書について、そのハッシュ値とタイムスタンプ内のハッシュ値を照合することで、文書が改ざんされていないか確認できます。もし元データが改ざんされている場合、ハッシュ値が一致しないため、改ざんが検知されます。
タイムスタンプの効果
秘匿性の維持
タイムスタンプを使用することで、自社の発明・技術情報の内容を公開せずに存在証明を行うことが可能です。迅速な導入と使用
タイムスタンプサービスは、導入から使用までが非常に迅速です。証明書の発行も即座に行うことができるため、手間や時間がかからないのが特徴です。コスト削減
タイムスタンプは、特許申請よりもコストが低く、迅速に知的財産を保護する手段として注目されています。安心材料としての役割
タイムスタンプは、特許や知的財産の保護において一つの安心材料となります。特に、法的な紛争が発生した場合に、タイムスタンプが存在することで、自分の立場を強化することができます。
タイムスタンプの活用場面
開発情報の日付確保
研究開発部門で生成される技術情報やアイデア書類、図面などにタイムスタンプを付与することで、その作成時期を確保します。これにより、他社が後に同様の技術を特許申請した場合でも、タイムスタンプが存在することで、自社のアイデアや技術が先に存在していたことを証明できます。協力会社との情報管理
協力会社との共同開発や情報共有を行う際、自社と他社の情報が混在しないようにタイムスタンプを利用することができます。これにより、どちらの情報がどの時点で存在していたかを明確にし、知的財産権の紛争を防ぐことができます。社内情報の管理
社内で共有する情報や技術の存在を証明するために、タイムスタンプを利用することができます。これにより、社外に出さずに社内のみで情報を管理することが可能です。先使用権の確保
特許を取得しない場合でも、タイムスタンプを使用して先使用権を確保することができます。先使用権とは、他社が特許を出願した場合でも、自社がすでにその技術やアイデアを持っていたことを証明することで、引き続きその技術を使用できる権利です。
まとめ
タイムスタンプ技術は、特許や知的財産の保護において非常に有効な手段です。迅速かつ低コストで知的財産を保護することが可能であり、法的な証拠としても強力な効果を発揮します。今後の知的財産保護においてさらに重要な役割を果たすことが予想されます。企業が自社の技術を守るためにタイムスタンプを活用することは、将来的な知的財産保護において非常に重要なステップとなります。






