
記事執筆:袖山 喜久造
国税庁、東京国税局調査部において大規模法人の法人税等調査事務等に従事。同局調査部勤務時に電子帳簿保存法担当の情報技術専門官として調査支援、納税者指導等に携わる。平成24年7月に退職し同年9月税理士登録。千代田区神田淡路町にSKJ総合税理士事務所を開業。税務コンサルティングのほか、企業の業務DX化コンサルティングを行っている。令和元年SKJコンサルティング合同会社設立・令和5年4月代表社員就任
1. 電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法(以下、「電帳法」)は、税法で保存義務が規定される帳簿書類等の保存方法の特例法です。法人税法や所得税法では、帳簿書類は書面(紙)による保存が義務付けされています。帳簿書類については、自社で作成したデータがあれば電帳法第4条第1項や第2項により作成データを法令要件に従って保存することで書面の帳簿書類の保存に代えることができます。
書面で受領した取引書類は自社に作成データはないので、電帳法第4条第3項の国税関係書類のスキャナ保存の規定により、法令要件に従った入力(スキャニング)やデータ保存をすることで原本の保存に代えてデータで保存することが可能となっています。
また、書面ではなくデータで授受された取引書類等のデータについては、電子取引として、電帳法第7条の規定により、法令要件に従ったデータ保存が必要となります。
2. スキャナ保存と電子取引データの保存要件
(1) スキャナ保存の要件
① 入力要件
書面の取引書類を、授受後「速やかに(概ね7営業日以内)」若しくは「業務に通常要する期間経過後速やかに(概ね2カ月以内)」にタイムスタンプを付与して保存する必要があります。入力に当たっては、書類に記載されている4ポイントの文字が判読可能な解像度(200dpi以上)でカラースキャニングすることが必要となります。(ただし一般書類 は除く)
② 保存要件
国税関係書類のスキャナ法令要件は、保存システムの要件、入力機器の要件、出力機器の要件、入力期限の要件の4つの種類に分類されます。スキャナ保存を行うためには、電帳法で規定される要件に全て対応したシステムを使用する必要があります。
以下、令和5年度の改正後(令和6年1月1日以後にスキャナ保存を行う場合)の保存システムの要件について解説します。
イ. 保存システムの要件
㋑ タイムスタンプの付与及び検証機能
国税関係書類をスキャナ保存する際には、一の入力単位(原則として書類ごと)のデータに対してタイムスタンプを付与しなければなりません。タイムスタンプは、存在証明(作成日時)及び非改ざん性を証明することができます。電帳法で規定されているタイムスタンプとは、総務大臣が認定する時刻認証業務の認定を受けた認定事業者が発行するタイムスタンプをいいます。
スキャナ保存を行うシステムでは、認定タイムスタンプの付与、及び当該タイムスタンプを検証する機能が必要です。検証機能は、タイムスタンプが有効であること、データの非改ざん性を検証することが必要です。また、検証機能は、課税期間中に付与されているタイムスタンプを一括して検証する機能(一括検証)も要件となります。
㋺訂正及び削除履歴の確保
スキャナ保存では、保存された証憑データの訂正又は削除を行った場合には、訂正や削除の事実及びその内容を確認できることが要件となっています。
「訂正又は削除」とは、既に保存されている証憑等のデータを訂正(差し替え)又は削除(取り消し)した場合をいい、訂正前の証憑等のデータは、新たに差し替えられた訂正後の証憑等データとの関連付け(バージョン管理)を行う必要があります。
㋩相互関連性の確保
スキャナ保存された書類データと関連する帳簿(仕訳情報)の間で、相互にその関連性を確認できることが要件とされています(一般書類を除く)。この「関連性を確認すること」とは、例えば、相互に関連する書類及び帳簿の双方に伝票番号、経費番号、取引案件番号など仕訳情報を一意(ユニーク)とする項目で関連付けする方法、データ件数が少ない場合などでは日付や取引先など特定できる項目を持つことで、書類データおよび仕訳情報のいずれからでも確認できるようにする要件となります。
㋥検索機能の確保
スキャナ保存された証憑等のデータは、「取引年月日またはその他の日付 」、「取引金額」、「取引先」の3項目で検索ができる機能が必要です。検索方法は、日付情報、金額情報については範囲指定ができること、また、2項目以上の検索項目による条件設定が可能であり、速やかに検索結果のみを明瞭に表示できることが必要です。
ただし、検索項目などをダウンロード又は検索項目が含まれるデータをExcelなど表計算ソフトで作成し、税務調査時の提示・提出(ダウンロードの求め)に応じることで対応することも可能です。
(2) 電子取引データの保存要件
令和3年度の電帳法改正では、電子取引データは出力書面による保存ができなくなりました。令和6年1月1日以後に行われる電子取引については、電帳法の要件に従ったデータ保存が必須となりますので、全ての事業者が対応しなければならないことになります。以下、電子取引データの保存要件について解説します。
イ. 真実性の確保要件(措置要件)
電子取引データの真正性を担保するため、電子取引データの授受方法等に応じて、以下のいずれかの措置を行った上でデータを保存する必要があります。
㋑タイムスタンプ付与データの授受
送信者側においてタイムスタンプが付与された取引データを授受する措置です。この場合、送信者側及び受信者側においてタイムスタンプの検証及び一括検証機能 が必要となります。
㋺電子取引データの授受後タイムスタンプを付与
送信者側又は受信者側において、当該電子取引データの授受後、業務処理サイクル後速やかに(約2か月以内)にタイムスタンプを付与する措置 となります。この措置要件で対応する場合は、タイムスタンプの検証及び一括検証機能が必要となります。
㋩訂正削除履歴が残るシステムを使用して電子取引データを授受及び保存
電子取引データを訂正及び削除ができないシステム、又は電子取引データを訂正及び削除した場合の事実及び内容を確認することができるシステムで授受及び保存する措置です。電子取引データを授受するシステム(EDI システムやクラウドシステムなど)が該当します。
㋥訂正及び削除の防止に関する事務処理規程の備付け及び運用
電子取引データを適正に保存する社内ルールを構築する措置となります。訂正や削除を行う場合の正当な理由を定め、保存すべき電子取引データが適正に保存されるように事務処理規程を定め、当該規程に沿った運用を行うことが必要となります。
ロ. 関係書類の備付け
電子取引データの授受システムなどのシステムの概要書やデータを出力や検索するための操作マニュアルなどを備え付けておく要件です。
ハ. 見読可能性の確保
保存期間中、電子取引データを PC、プリンタに整然とした形式で明瞭な状態で出力できることが必要です。税務調査時は、調査官用のPCやプリンタを準備する必要があります。
ニ. 検索機能の確保
電子取引データの検索項目は「取引年月日またはその他の日付 」、「取引金額」、「取引先」の3項目で検索ができる機能が必要です。検索方法は、日付情報、金額情報については範囲指定ができること、また、2項目以上の検索項目による条件設定が可能であり、速やかに検索結果のみを明瞭に表示できることが必要です。
なお、日付や金額の範囲指定や複合条件設定ができない場合には、検索項目を別途 Excel 等で索引簿により作成し、当該索引簿による検索結果から保存データをファイルサーバ等からダウンロードすることにより代替することもできます。
また、判定期間(個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)において、売上高が5,000万円以下 である保存義務者は電子取引データのダウンロードで、税務調査の際にデータのダウンロードの求め(税務職員への提示・提出の要求)に対応することができる場合には検索要件は不要とされています
[1] 一般書類とは重要な書類(契約書・納品書・請求書・領収書など取引に直結する書類)以外の書類を指します。
[2] 令和3年度の改正により、保存するシステムが、利用者の改ざん可能性を100%排除できる、例えば他社が提供するSaas型のクラウドサービスなどにおいて、公共時刻情報で保存日時を表示でき、訂正及び削除の履歴を全て保存できる機能があるシステムに保存する場合には、タイムスタンプを不要(電子取引データを保存する場合を除く)とすることができるように改正されています。
[3] 取引年月日とは、書類に記載されている日付のほか受領日や処理日などが該当しますが、その他の日付とは、書類と仕訳データが関連付けられている場合などでは計上年月日などが該当することになります。
[4] 一括検証機能とは、課税期間中に付与したタイムスタンプについて一括して検証を行う機能をいいます。
[5] ㋺の措置においては、令和5年度の改正により、令和6年1月1日以後の電子取引データについては保存担当者等の情報を確認することが廃止されています。
(3) これからの文書管理
企業の電子化の検討においては、データで保存することとする取引書類の重要性を鑑み、書面で授受される取引書類の電子化とデータで授受される取引書類を別々に保存するのではなく、重要度の高いすべての取引書類についてデータで一元管理がされるように検討すべきです。そして電帳法の法令対応のみを行うのではなく、デジタル化された証憑データを活用し、経理業務やその他の業務のDX化の検討をすることが重要です。
(4) stiiタイムスタンプ付与マネージャーについて
「stiiタイムスタンプ電子帳簿保存法マネージャー」は電帳法第4条第3項で規定される取引書類のスキャナ保存及び電帳法第7条で規定される電子取引データを保存する場合の選択要件の一つである認定タイムスタンプの付与機能及び検証機能(一括検証を含む)を有している製品となります。当該タイムスタンプ要件以外の保存要件は併せて利用する他のシステム等による保存要件対応が必要となりますので、stiiタイムスタンプ電帳法マネージャーを他システムにアドオンし電帳法のタイムスタンプ要件の対応をすることができます。
また、スキャナ保存や電子取引データのタイムスタンプ付与要件は、個々のデータにタイムスタンプを付与することになりますが、「stiiタイムスタンプ電帳法マネージャー」は、1件ごとのファイルを選択してタイムスタンプを付与するだけではなく、指定したフォルダ内のデータすべてに一度の操作でタイムスタンプを付与することができるため、タイムスタンプを付与の手間がかかりません。
認定タイムスタンプは、電帳法の要件に対応するだけではなく、社内の重要データの真正性の確保に役立ちます。例えば、電子契約書や無形固定資産(知財)については、その時点で存在することや非改ざん性が証明されますので訴訟等の証拠力の確保などに役立ちます。
[6] 令和5年度の改正により、令和6年1月1日以降に電子取引データを保存する場合の検索機能の確保要件が免除される事業者の範囲が1千万円以下から5千万円以下に拡大されています。



